「飛ばそう、ドクタージェット」救える小さな命を高度専門病院へ

 

 

【「飛ばそう、ドクタージェット」救える小さな命を高度専門病院へ】を応援いただいているみなさま、誠にありがとうございます。JCCNの福嶌です。

 

クラウドファンディング挑戦(第1弾)も、1月29日23時を持ちまして終了しました。

ここまでに800人を超える皆さまから、1500万円を越えるご支援と胸が熱くなる応援のメッセージをいただいております。心より、御礼申し上げます。

 

目標としている1億円には及びませんでしたが、ドクタージェットが子どもたちの命を救う未来は絶対に諦められるものではありません。

 

なんとしてもここから巻き返すという決意と、ご支援や情報拡散のご協力に関する大切なお願いを、3つの観点から綴りました。

 

 

令和6年能登半島地震を経て

 

本プロジェクトの公開期間中に、令和6年能登半島地震が起こりました。被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。私と同じ医療者の仲間の多くが能登半島入りをし、被害を受けられた皆様のために奔走しています。被害を受けられた皆様の安全と1日でも早く平穏な生活に戻られますことを心よりお祈り申し上げます。

能登半島に元々いらっしゃったお医者様方、そして、地域外からの派遣で現地に赴く医師の皆様は、患者様のために最大限ご尽力をされています。一方で、改めてドクタージェットの必要性を痛感します。

1月11日現在、被災地においては一度病院にかかった患者様の二次避難(他の病院への転院)の広域移送がたくさん出てきていると伺っています。

移動手段としては、ドクターカーやドクターヘリをしておりますが、ドクターヘリでの移送は航続距離等の問題から、愛知県までの移送が限界となっています。すでに中部圏の病院が満床になりつつあり、それ以外の地域への患者移送が開始されようとしています。そうしなければ、被災地の患者様は行き場がなくなります。

また、ドクターヘリは夜間の移送ができず、雪などの悪天候の大きな影響を受けます。実際に雪の影響で着陸できなかった事象も起きているようです。能登空港も滑走路が壊れたことによって、民間の飛行機の離着陸ができない状況にもなっています。

平時においては、ドクタージェットは小児重症患者を搬送する手段として活用されますが、今回のような有事の際にも活用できる場面は多数あります。

たとえば、重症な患者さんの治療には広いスペースとたくさんの医療者の関りが必須であり、被災地の病院の大きな負担になっています。その患者を他県の高度医療センターにジェット機で搬送することは、地元の病院の負担が減少します。

また、子どものトリアージ(傷病の緊急度や重症度に応じて治療優先度を決めること)は小児集中治療を専門とする医師でないと難しいことが多く、寒さは子どもには大敵であり、軽症に見える場合でも、できるだけ早くPICUに運ぶ必要があります。PICUに運ぶにはジェット機の搬送が必要になります。

だからこそ、日本でのドクタージェット運用を実現させるために、私たちは引き続き活動をしていきます。

 

住む場所によって助からない命がある国、日本

 

 

私は子どもの心臓血管外科医として、40年以上にわたり数々の子どもたちと向き合ってきました。その間、医療の進歩によって、重症な子どもの救命率や治療後のQOLは向上していますが、適切な治療を受けるには、適切な病院にたどり着かねばなりません。

子どもの集中治療ができる病院は、日本全土でも限られます。すなわち、病状の悪化や大怪我をした場所から、適切な病院へ搬送する手段があった子どもたちだけが助かるのです。

日本という国は、住む場所によって助からない命がある国です。私はこれまで、設備の整った病院に搬送する手段がなく、亡くなった子どもたちを数多く見てきました。助けられるはずなのに、助けられないという悔しさや申し訳なさは、言葉にできるものではありません。

「子ども一人を助けるために、飛行機まで飛ばす必要はあるのか?」という疑問もあるかと思います。実は、小児集中治療室:PICUの設置病院は、2023年10月段階で全国にわずか35箇所です。しかも、救急救命機能を持つPICUは、関東以西の都市部にしかありません。

専門病院から遠い子どもたちを助けるには長距離搬送手段が必要です。しかし、日本の搬送ルールとして、ドクターヘリやドクターカーは、基本的に都道府県境を跨いで搬送することができません。これは、医療体制への国・自治体の予算配分が関係しており、医療提供はその都道府県の中での完結が原則になっています(災害発生時などは例外)。

ルールを変えれば済むというわけではなく、例えばドクターヘリは航続距離が短く、長距離搬送できません。また、振動も激しく、狭く、搬送中の治療はほとんどできません。人数制限によりご家族も乗れず、子どもが病院に着いても、重大な決断をするご家族がいなければ、治療が遅れます。その間に子どもの状態がさらに悪化することもありえます。

現状の体制にはこうした不足点がある中で、懸命に闘う子どもたちや、なんとしても助けたいと願うご家族に応えるには、「これで十分」という妥協は絶対にありえません。

目の前に現れた患者さんを救うだけでなく、病院と患者さんとをつなぐ努力も、医療者としての責務だと私は考えています。

 

ドクターへっとの必要性を、国に示すために

 

 

数ある障壁を乗り越えるために、私たちはドクタージェットが自治体に縛られない国策になることを望んでいます。異次元の少子化対策では、全国どこでも子どもを育てられる環境整備は極めて重要なはずですが、事例なく国の予算が下りません。そこで、まずは実証実験という形で、自分達で資金を集めてドクタージェットを飛ばすことにしました。

このクラウドファンディングはまさに、国にドクタージェットの必要性を示し、日本の空に飛ばす第一歩です。

これまで多くの医療関係者さまからご支援をいただいておりますが、目標まではまだまだ遠い道のりです。この道のりを進みきるには、急性疾患や災害・事故による怪我など、もしものときを想像いただけるみなさまからのご支援や情報拡散が必要です。

改めてのご支援や、SNSでの拡散、ご家族や親しいご友人などに、私たちの活動を広めていただければと思います。ぜひ私たちと一緒に、救える命を救っていただきたい。ドクタージェットを待つ、全ての子どもたちのために、温かいご支援をよろしくお願いいたします。

 

NPO法人 日本重症患者ジェット機搬送ネットワーク理事長
福嶌 教偉