重症患者をジェット機で国内搬送するネットワークの設立を目指す特定非営利活動法人(NPO)日本重症患者ジェット機搬送ネットワークが2022年10月24日に誕生しました

  

 我が国でも重症呼吸・循環不全に対する集学的治療の進歩は著しく、大動脈バルーンポンピング(IABP)、Extracorporeal Membrane Oxygenator (ECMO)、補助人工心臓(VAD[経皮的補助人工心臓(IMPELLA)を含む]などの機械的循環補助を含む集学的治療の、救命率や治療後の予後・QOLは著しく向上しました。しかし、このような治療は大都市に限定され、それらの地域以外の重症呼吸・循環不全患者は、高度な専門的治療を受けられないのが、我が国の現状です。特に小児の重症呼吸・循環不全患者において、これらの集学的治療を受けられるのは、さらにごく一部の大都市に限られています。また、新型コロナウイルス感染症の蔓延を経験し、現状のままでは、新興ウイルス感染症が地域で感染拡大するとその地域の医療崩壊を招くことも明らかになりました。

このような現状で、重症呼吸・循環不全患者が国内で公平に医療を受けるためには、人工呼吸器や上述のECMOをはじめとする機械的循環補助を装着した患者を、地域から高度医療施設に空路で搬送するための医療技術を開発するとともに、広域医療搬送を可能にするようなネットワークを構築することが、喫緊の課題と思います。また、引き続いて医療が必要な場合には、紹介元へのback transferまで考えたネットワークを作ることが、患者と家族のQOLを考慮した治療体系であると考えます。

そこでこのたび、重症患者の迅速な搬送・治療に繋げる「救命のための予防線」となるような日本重症患者ジェット機搬送ネットワーク(Japan Critical Care Jet Network:略称JCCN)の設立を目指して、重症患者の治療に関わる医療界関係者が中心になって、法曹界、行政、運航事業者と連携できるような特定非営利活動法人を設立いたしました。

 

事業の構想

   以下の4つの事業を行う方針です


超重症患者搬送

  • 重症循環・呼吸不全、肝不全、重症熱傷・外傷患者など、緊急を要し、高度集中医療を要する患者を搬送します
  • 基幹病院から専門スタッフと必要医療器材を携行して、搬送元の病院に出向いてそこで必要な処置を実施して、超高度医療機関に搬送します

帰省搬送 (Repatriation)

  • 都市部から北海道や沖縄など観光地を訪れた際に重篤な疾患や重症外傷に罹患した場合に、患者の居住地(地元)の医療機関に転送します

集中治療継続患者後方搬送( バックトランスファー)

  • 超高度専門治療により患者の状態が改善して、一般的な集中治療施設、すなわち搬送元の医療機関での治療が可能になった時点で、搬送元の医療機関に再転送して、集中治療を搬送元で継続する。

 

臓器移植時の患者・臓器の搬送

  • 臓器提供発生時にレシピエントを移植施設まで、移植臓器を移植施設まで広域に固定翼機で搬送